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2023.08.22
【特別対談】OmniSorterを1年間使って見えたこと
日本トータルテレマーケティング株式会社
はじめに
近年、消費者のインターネットを利用した購買文化が定着し、ECやオンラインショッピングの需要は右肩上がりを続けています。
日本トータルテレマーケティング様では、「物流DXをこしらえる」をテーマに掲げ、2021年に導入された「OmniSorter(オムニソーター)」をはじめ、フルフィルメントサービスにおける様々な自動化に取り組まれています。そうした中、この度2台目のOmniSorterのご購入をいただきました。
今回は、同社 フルフィルメント事業本部 執行役員の三谷様に、1台目をお使いいただいたご感想や、2台目をご購入いただくに至ったお考え、自動化についてどのように考えて行動されたのかなど、弊社 代表取締役CEO兼Roboware事業部長の中村との対談形式でお話をうかがいました。
OmniSorterを1年使ってみて
---- 中村:この度2台目のOmniSorterをご購入いただきありがとうございました。最初に1台目についてのお話をうかがいます。1年半OmniSorterをお使いいただき、御社のビジネスや作業者現場の変化など、どのように進んでこられたか、率直なご感想をお願いします。
三谷様:1台目の導入時に考えていたのが、「作業者がミスを犯した時に、それを追求しなければいけないことが1番悲しい」ということです。
人間だから間違えることがあるのは当然ですが、その間違いを無くすために会社として何ができるのか。作業者が間違えることなく働けるようにするためには、どのような方法があるのか。
それを実行できれば、作業者側にとっては働き方改善に、企業側にとっては品質を100パーセント担保するための方法を考えることにつながります。
社内では5年ほど前から、「これから物流の変革の時代が来る」ということは話題にあがっていました。大手企業やメーカーを兼ねているような大きな倉庫であれば、それだけのための効率化を図ればよいですが、我々のような3PL事業者はそうはいきません。実際、当センターでは約 60以上のクライアント様を抱え、シャンプーや石鹸、食品、ドッグフードなど、多種多様な商品を扱っています。
決まった形のラインを作ってしまうと、全てのお客様のニーズに答えることができなくなってしまいます。そうすると品質でばらつきが出てしまうなど、様々な問題が生じます。
そんな中、OmniSorterは、「物流業界において新たな付加価値をこしらえる」という我々の理念にマッチしていました。
---- 中村:1台目を導入したことで感じられたメリットはございましたか?
三谷様:1番のメリットは、「目で見て理解いただける品質」を形にできた点です。当センターを見学に来られたお客様全てが、この運用フローを見て、企業が最も重要視するべき「企業信用を守るということについて、個人情報照合が100パーセントできる」と理解していただけます。この点について、非常に満足しています。
また、今回2台目の導入を決定した理由は、より効率化を図るためです。時間当たりの処理速度が決まっているのに対して、今扱っている物量がその数倍もあります。であれば、2台目を導入する方が効率的でした。増設することで、今まで以上に品質を担保することができます。また、現在の物流業界が抱えている2つの問題、「労働力の問題」と「2024年の配送問題」が解決できます。
物流業界の2024年問題について
---- 中村:色々なテーマをいただいたので、1つずつ深掘りできたらと思います。まず先程お話された、物流業界で抱えられている問題解決について詳しく教えていただけますでしょうか。
三谷様:まず、労働力の問題ですが、少子化が進行する中で、労働力不足がますます深刻化していくことが予想されます。
この問題に対しては、OmniSorterが決められた時間内にきちんと100パーセントの品質を担保して稼働することで、クリアできていると思います。
また、稼働時間については、夜間もOmniSorterを稼働させることで対応しています。機械は電気さえあればずっと稼働できますから。
次に2024年の配送問題についてです。運送会社の運転手不足や年間の残業時間の上限によって、今までになかった問題や規制がかかります。この問題は、委託している運送会社も例外ではありません。
今までよりも早い時間に荷物を引き渡さなければ、遠方に荷物が届かなくなる可能性があります。ですので、今後は出発締め切り時間が今よりも前倒しになることと予想しています。
この問題に対しては、人員を増やすではなく、OmniSorterを効率的に稼働させることが求められます。人が1時間かかっているものを30分間で作り上げ、対処していくことが必要です
自動化はどの工程からやるのが良いのか
---- 中村:いま自動化を検討されるお客様で、どの工程から進めるかでお悩みの方が多いです。御社の場合は、最初に梱包やラベル、またOmniSorterによる仕分けといった、後ろ工程から自動化を進められています。後ろ工程を自動化されたことでどのような変化があったのでしょうか?
三谷様:後ろ工程から自動化を始めた理由は、我々はクライアント様から商品と同時に企業信用を預かっていますので、その信用を最優先に考慮する必要があるためです。また、作業者たちの安全性も確保するためです。
冒頭に述べたように、「作業者たちがミスを犯した時に、それを追求しなければいけない」ということに対して、意図的にミスを犯す人はいません。例えば、「届いた商品が違っていました」といったトラブルが発生しても、誰が間違えてしまったのかを特定することはできません。なぜなら、それは意図的なものではなく、悪意を持ってやっているわけではないからです。
とはいえ、会社としては同じ間違いを繰り返さないために再発防止策を考えなければなりません。「誰がミスを犯したのか」「どの工程で発生したのか」、原因の特定をしなければなりません。しかし、それをすると不思議と現場チームのモチベーションが下がっていき、生産性が低下してしまうものなのです。
このような問題を解決してくれたのが自動化です。OmniSorterや他の連結する機械など、自動化によって全てのログが残されるため、間違えようがありません。現場の作業者たちも安心して仕事をすることができます。会社としても疑いをかけることが無くなり、作業が完全に安全であるという安心感があります。
---- 中村:企業として信頼をお客様に担保しないといけない中で、ミスがどこにあったかを必ず追求しないといけない。ネガティブな要素が、ここで担保されるというお話はすごく面白いですね。
三谷様:やはり人間なので、原因がわかったとしても同じ間違いを起こさないとは限りません。それがOmniSorterによって改善されました。 「AとBとCの商品を何個入れて、納品書と一緒にここに入れる」という作業が1番間違えやすい箇所でしたので。
また、取り扱っている商品の中には、化粧品や健康食品、薬など、お客様がお悩みを持って購入される商品が多数あります。お悩みを持っているが故に人に知られたくない、それがミスによって第三者に知られてしまうということは絶対にあってはなりません。自分が注文した荷物の中に、他人の名前と住所が記載された納品書が入ってしまうという事態は許されないのです。
OmniSorterのラインではこのような事態は100パーセント起きません。 なぜなら、作業者が数を数えなくても、商品を知らなくても仕分けができるからです。万が一数を間違えて流してしまっても、機械が弾いてくれますし、違う商品は絶対にカートに入れてくれないので間違えようがありません。一番作りたかった価値が最大限に発揮されています。
ロボットのトラブルや不安をどう乗り越えたか
---- 中村:1台目についてのお話ですが、Robowareにとっても御社への導入が最初の1台目でした。我々がその責任を果たすのは当たり前ですが、一方で機械トラブルが起こる度に、現場の皆さまにとっては不安に感じられることもあったかと思います。自動化を検討していらっしゃる方って、そのような「何かが起こる度に現場に不安が募る」ということを心配される方が多いです。御社ではどういう風に打破して、 ここまで品質を高めてこられたかを教えていただけますでしょうか。
三谷様:現場レベルでは大きく2種類の問題に分けられると思います。
1つ目はシステムやプログラムに関する問題です。プログラムにバグが出てしまうと、作業者側では解決できません。このような場合は、Robowareに連絡して遠隔で対応してもらうことで解消できています。
2つ目の問題は、少し細かい話になりますが、中で動いているロボットが指定の位置から少しズレて止まってしまい商品が入らなくなる事象です。このような場合は、位置合わせをする必要があります。
最初の頃は対処方法がわからなかったため、すぐに連絡して対応をお願いしていました。
しかし、現場作業者たちが対応を見て勉強し、今では自分たちで設定位置の調整対応ができるようになっています。
センターの位置を調整するぐらいで、自社の社員で解消できるだけのレベルです。現在では、この問題は障害とも思っていません。
不具合が発生した場合は、予備のロボットと交換して修理をしてもらうことで対応しています。この方法で運用に問題はありません。
機械である以上、トラブルが発生することは当然のことです。想定外も起こり得ることを念頭に置いておく必要があります。
Robowareには、導入当初から起きたトラブルに対して迅速に対応していただけました。トラブルが発生した場合でも、「作業をいかに止めないか」に対して非常に的確に動いてもらえましたので、最小限の遅延で問題を解消することができました。
品質=利益である
---- 中村:一般的な自動化のケースですと、省人化や投資対効果などに目的を置かれる。これは経営の指標として非常に重要なポイントだと思います。しかし御社の場合は、品質をしっかり守るという部分にビジョンを置かれている。そのためには機械をどう使うかという考えになっているので、目的が全く別のところにある。現場の作業者の方も含めてその目的を共有できているからこそ、常に改善が行われていると思うのですがいかがですか?
三谷様:別の考え方とおっしゃいましたけれども、我々にとっては品質=利益になります。品質を守ることが利益につながります。
なぜかというと、ナショナルブランドのクライアント様にその傾向が強いのですが、間違いやクレームなどのトラブルに対して非常に敏感です。これまでは、トラブルに対して「作業現場にはコンプライアンス教育をしていました」「1週間に一度、作業者の現場教育をしていました」など、目に見えないポイントだけでクライアント様にご説明するしかありませんでした。
さらに、SNSの反応も考えなければなりません。最近では、SNS上に書かれたことは全て事実として、良かったことも悪かったことも一気に拡散されてしまいます。商品がしっかりしていたとしても、悪意を持った僅かな人が悪評を書いたら、それがまるで事実のように広まってしまいます。そういったことがないよう、我々ができることは「非の打ちどころのない商品をお客様にお届けする」ということです。
それをしっかりと説明するため、作業の委託を検討されているクライアント様には、まず見学に来ていただいています。そして「この運用フローだったら間違えようがない」と理解いただき、品質に安心感を抱いていただき受注に繋がります。
全てはイコールになっています。品質=利益、 品質を守ることは、会社を守ることにもつながるのです。
利益追求や投資効果、その回収という点も、もちろん企業として数字を追っています。
ただし、クライアント様が仕事を委託してくださることこそが、何よりも大切なことですから。
---- 中村:大変勉強になります。長期的には自分に帰ってくる、それが利益に繋がってくるということですね。
どこを標準化・カスタマイズするか
---- 中村:クライアント様が60社以上ということで、普通の物流会社さんからすると驚かれる数字だと思います。60社分をまとめるのは、高いレベルの品質かつオペレーションの体制が求められると思います。御社では工程の標準化やクライアント様によってカスタマイズなど、基準はあるのでしょうか?
三谷様:このようなオペレーションが可能になったのは、OmniSorterがあるからです。
この業界は季節波動によって出荷数が大きく変わります。お盆やクリスマスなど、急激な需要の変動が起こる際には、派遣作業者に頼らざるを得ないことがあります。しかし、毎回同じ派遣作業者が来るとは限りません。その都度新しい派遣作業者に作業工程や商品について教育することは、労力的にも品質的にもリスクがありました。
OmniSorterであれば、派遣作業者でもベルトに流すだけで簡単に作業できます。オペレーションが多岐に渡るからこそ、作業者がスキルを持たずに品質を担保できるか。それこそが、この運用フローの最大のメリットです。
---- 中村:スキルを求めないというのは、例えば今後労働人口が減っていくという部分を見据えて、その上で標準化したオペレーションが、ますます求められるというお考えでしょうか?
三谷様:そうですね。加えて、コロナ禍による影響もあり、 消費者の買い物の仕方が180度変わってしまったことが理由の一つです。
いまや年配の方でも、インターネットでのショッピングが当たり前の文化になりました。それに伴い、EC市場は急速に拡大しています。
商品の売れ行きが好調であれば、当然1日の出荷数も増加します。しかし、OmniSorterは1時間あたりの仕分け個数は決まっています。
1台では対応しきれなかった仕分け作業に、2台目のOmni Sorterが導入されたことで、2台の生産稼働率に合わせて、夜間も稼働する必要があるかどうか、また明日はどのように生産計画を立てるべきかといったことが容易になりました。
例えば、人が作業する場合、熟練のパート作業者は1時間で100個のダンボールを作ることができますが、経験の少ない作業者では50個しかできないといったように、出来高に差が生じてしまいます。しかし、機械は数値で決まっているため、生産計画を立てることが非常に容易になります。
また、今後の労働力不足に対する対策についても、機械の正確な数値を基にすることである程度シミュレーションが行えます。今後も同様の物流動向が続くのであれば、業務量に合わせて人員を増やす必要があるのか、それとも3台目のOmni Sorterを導入するべきなのか、といった検討ができます。
最近では、派遣作業者の人件費単価が上昇してきており、社員の労働時間も増加しています。そのような中でもコストを抑えていかなければなりません。
機械は「何時間回せば何個生産できるのか」「電気代はいくらかかるのか」といった点を明確に数値化できるため、コストも踏まえた管理が容易になります。
---- 中村:数値化できたことで生産計画が立てられるというのはすごくよいことですね。 今お話あった夜間作業の考え方についてですが、御社の場合は日中にトータルピックで準備され、夜から朝にかけてOmniSorterをずっと回していただいているとうかがっています。
三谷様:作業現場では、日々シミュレーションをしながらフローを改善しています。新しいことを試して、ダメだったら今のフローに戻せばいいだけなので、まずは色々なことを試しています。その一環として行っているのが夜間作業です。
人手による夜間作業は人員確保が困難です。それに夜間割増手当も発生するため、昼間よりも高い人件費がかかります。
一方、機械であれば昼夜問わず、日曜祭日でも割増がありませんので、計算しやすいです。
コンパクトなロボットで倉庫設備の考え方は変わるのか
---- 中村:OmniSorterは従来のマテハンの仕分け機やコンベアのピースソーターなどと比べるとコンパクトです。そのあたりも導入時にお考えにあったのでしょうか?
三谷様:OmniSorterを検討する前に、色々な展示会に行って話を聞きました。結論として、クライアント数が多い場合、 1回の仕切りのバッチが1000あろうが2000あろうが結局無駄になってしまうと思いました。
であれば、500ぐらいのOmniSorterが最適であり、それを増やしていこうと考えました。1日の出荷個数が多いクライアント様だと、最大8000~9000個になる時もありますが、場面に応じてOmniSorterの1台を専用で回せば対応できます。もし必要であればそのクライアント専用として台数を増やすということも考えられます。
OmniSorterでは、カートが入るレーンを横に延長するということもできますが、特定のクライアント様のためにカスタマイズすると、何かあった場合に不安ですよね。1日約500個、多くても1000~2000個がほとんどです。であれば、OmniSorterのスペックは今と同じで、台数で間口を増やしていくべきだと考えました。
レーンの延長をした方が2台目を入れるよりも安いので最初は検討しました。しかし、台数を増やして対応するほうが実用的ですし、オペレーションにも適していると思います。このオペレーションであれば、クライアント様ごとに分けて同時に流すことができますので。
---- 中村:なるほど。カスタマイズで列を増やす方がいいって考えになりがちですけど、同じスペックで台数を増やしていく方が、御社のオペレーションには合っていたのですね。
三谷様:あとは、導入の際に中国の生産メーカーだけとの交渉だったら、ここまで踏み切れなかったですね。Robowareにフロントに立ってやり取りしていただいたというのが大きいです。
ロボット投資の意思決定の仕方
---- 中村:自動化に対して、投資の意思決定をどのようにすれば良いか悩んでいる役員や経営者の方が多いです。その方々に向けたメッセージをいただきたいです。御社の場合は、品質担保や長期的な信頼を作っていく考えがあったと思いますが、そのように始めるのが良いのでしょうか?
三谷様:投資対象になるかどうかは、最終的にトップ判断で儲かるか儲からないかです。投資したことに対して利益が出るのか、何年かかるのかという部分が重要だと思います。OmniSorterは、これらの要素をわかりやすく示してくれます。なぜなら、「今やっている作業をもっと合理的に、効率的に、品質を担保して利益を出したいから導入する」という入口で考えることができるからです。
作業に関する数字は、1ピッキングでいくら、2ピッキングでいくら、送り状照合でいくら、というようにそれぞれの単価が決まっています。1つの作業をすると、その単価に基づいてクライアント様に請求します。
OmniSorterで作業をする場合、時間や作業量は容易に計算できます。例えば、200の商品をOmniSorterで流すのに何分かかるか、その作業を人がやっていたら何時間かかるかなどです。
そのように対比した数字をクライアント数で合計することで、導入前後の原価の差がわかります。導入後では作業者は減り、1日にできる作業量は増えます。クライアント様に請求する金額は同じですが、原価は大きく変化します。
この原価を営業利益として考えると、1ヶ月でいくら、原価償却する場合の月の支払いはいくら、電気代はいくら、さまざまな計算が非常に容易になります。3PL業界であれば、今の作業をさらに効率化し、省人化や低コスト化を目的として導入する場合、非常に試算しやすいと思います。
---- 中村:全てが数字の信頼に最終的に帰着していくということですね。そこまで明確に考えられているかどうかが大事になるわけですね。そういった意味だと、OmniSorter導入前後で見られている数字の変化はあるのでしょうか?
三谷様:対比して数字を見ているのは、 利益率と稼働率です。具体的な数字は申し上げられませんが、導入後から大幅に改善できています。
また品質面の変化として、OmniSorterが完全稼働していた2022年度は、出荷個数498万個に対して、OmniSorterのラインでは事故がありませんでした。そのため、このセンターではできるだけ全てをOmniSorterで実施したいと考えています。できれば他の自動化も進めて、100パーセント品質担保ができるラインを構築したいですね。
今後のロボットに期待すること
---- 中村:本日はインタビューにご対応頂きありがとうございました。最後に、今後のロボットに期待することはありますか?
三谷様:今までは物流波動への対策といえば、「派遣を何人集められるか」「他の現場からどれだけの人員を投入できるか」といった方法しかありませんでした。
かつては人手不足の日が発生し大変な事態になることも頻繁にありましたが、現在はそのような事態がほとんどなく、当日欠勤が出ても何とかなってしまいます。これはOmniSorterを中心に自動化を進めたおかげです。
今後も、現場が大きく変わるようなロボットが登場することを期待しています。
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